昨年12月1日にISO18404が発行されました。皆様、このISOが何の規格かご存知ですか?
これは、シックスシグマと呼ばれる品質改善/経営改革のフレームワークに関する規格なんですが…、では、シックスシグマはご存知ですか? と、この問いには苦い顔をされる方もいらっしゃるかも。
今月のコラムでは、シックスシグマとそれに関連して発行された規格 ISO18404について話します。
■ シックスシグマ…、なんで苦い顔するの?
シックスシグマとは、アメリカで開発された"改善の進め方"です。主な特徴は、DMAICと呼ばれる手順(Define:問題を定義、Measure:現状を測定、Analyze:根本原因を探索、Improve:原因を改善、Control:改善後の経過を管理)に従って改善を進めることです。また、その活動は定量的に管理され、データに裏付けられる事実に基づいて進められることが推奨されています。

では、なぜシックスシグマと聞くと苦い顔をする人が多いのか? それもそのはず。
このフレームワークは、1990年から2000年くらいにかけて一度は日本企業(それも様々な分野の企業)の間でも流行ったんです。当時、GE(ゼネラル・エレクトリック社)のジャック・ウェルチ氏がこの方法論で大きな改善効果を上げたことも取り沙汰され、世界中に広まりました。ただし、日本はこんな時でもガラパゴス。「この手順はデータ偏重だ」「トップダウンは日本の風土には不向きだ」と様々な理由により、多くの日本企業が導入に失敗したと言われています。(もちろん上手に導入し、今も着々と改善効果を上げる企業もあるんですよ!)
■ シックスシグマが煙たがられる日本の品質事情
戦後、日本の産業が急速に回復し、発展し、80年代には既に高品質な製品を生み出していたことは有名な話ですよね。それは、GHQにより招致されたデミング博士による統計的品質管理の教えと、日本科学技術連盟(当時、同連盟会長の石川一郎氏)を中心とした熱心な技術普及の賜物です。加えて、日本ではQCサークル活動やTQC(Total Quality Control: 全社的品質管理)といった独自の改善文化が生まれました。これらが、戦後の急速な復興を実現させたと言われています。
では、シックスシグマはどうやって生まれたんでしょうか? 実は、シックスシグマは日本のTQCを発展させる形で開発されました。
そのシックシシグマが、数々の成功例を引っ提げて日本に上陸。期待を胸にいざ自社に採用してみると導入に失敗。拍車をかけるように他の企業でも…。このような環境では「やっぱり日本のTQC(その後、TQM※1に発展)による日本の品質の方が優れてるよね」と考えてしまうのも仕方がないのかも…。
※1 TQM: Total Quality Management: 総合的品質管理
■ ISO18404の目的
そんな活動が今さらなぜ?
答えは簡単。今さらも何も、グローバルではその頃からずっとシックスシグマが品質改善の主流なんです。ISO18404以前にも、関連規格はいくつか発行されています。
今回、ISO18404が発行されたように、シックスシグマの示す改善手順や考え方は標準化されるまでにしっかりしています。(洋書ではたくさんの書籍が出てますよ!) だからこそ、様々な文化圏の様々な組織がシックスシグマに沿って改善活動を進めることができているわけですが、今、シックスシグマをやってる企業って何ができればいいの?※2 という人材・組織が満たすべき適合性が問題になっています。これを定義したのがISO18404なんです。この規格の認証を受けることで、「シックスシグマを行ってますよ!」という人材・組織が一定以上の技術・能力・管理レベルを実現していることを保証できると考えられています。
※2 ISO18404には、Six Sigmaの他、LeanとLean&Six Sigmaに関する適合性についても記載されています。
■ 昨今のビジネス・教育事情とシックスシグマ
昨今、データ分析スキルへのニーズが飛躍的に高まっています。(東京だと求人も結構出てるらしいですよ!) ハイスペックなコンピューターやMinitabのような統計解析ソフトウェアが発達し、安価に供給され、その環境構築の敷居も下がっていますし、また、単純にデータが手に入り易くなったことも原因でしょう。
この点で、日本は大きな問題を抱えています。
それは、問題や状況に応じてデータを適切に取得し、それを分析できる人材がほとんどいないことです。従来、日本ではそのような情報教育が行われていませんでしたから、当然と言えば当然です。(90年代に多くの日本企業でシックスシグマ導入に失敗した原因も、このあたりにあるのかも…。)このような情報教育の改善については、昔から(古くはなんと昭和から!)産業界が文科省に向けて答申していました。昨今は、学習指導要領も改訂されてきています。ただ、教育者側の統計教育レベルの問題もあるので、現在、その方法論などが活発に議論されているところです。例えば以下。(Minitabチームも講演しますよ!)
第12回 統計教育の方法論ワークショップ
以上のような時代背景もあるので、今後、データドリブンな改善活動であるシックスシグマも見直されることになるかもしれませんね。
[ by T.Hirose ]
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