2016年12月のコラムからシックスシグマ活動におけるDMAICの各フェーズについて詳しく紹介しています。
今回は、最後のフェーズであるControl(管理)です。
このフェーズでは、改善の効果を維持・定着させることを目的とした管理を行います。
今月はこのControlフェーズのポイントをご紹介します。
■ Improve(改善)フェーズのおさらい
3月号のコラム Improveフェーズでは以下の項目を説明しました。
Improveフェーズの目的と流れ
アイデア出し、選定、評価によく使用されるツールと使用上の注意点
問題の原因と想定される潜在要因のうち、重要な要因を統計的に選定する手法 など
どれも知っておくと役に立つ内容ですので、思い出せなかった方はぜひ3月号のニュースレターをご覧ください。
Minitab News Letter 2017/3 - 統計解析ソフト Minitab
では、Controlフェーズにおける重要なポイントを説明します。
■ Controlフェーズの目的と施策
繰り返しになりますが、Controlフェーズの目的はImproveで実施した改善の効果を維持・定着させることです。 対象プロセスに一時的な改善が見られただけでプロジェクトを閉じてしまうと、時間の経過とともにプロセスが改善前の状態に戻ることや、プロセスの変更に起因して副次的に生じる問題を見過ごしてしまうことがあります。 ここでは、これらの問題を回避するためのいくつかの施策をご紹介します。
・改善内容の文書化
改善の成果を評価する際、改善前後の(一時点での)比較だけでなく、その効果の継続性にも着目する必要があります。
例えば、プロジェクト終了後に担当者の変更や顧客要求の変更が生じたとします。よくある話ですが、こういったタイミングで改善後に定義したプロセスが引き継がれないことがあります。 これだけで改善の効果は半減、最悪の場合、途切れてしまいます。この問題を回避するため、我々は改善内容を詳細に記述した文書を作成するわけです。
とはいえ、手順書をただ作成すればいいというものではありません。手順書を作成する際は、少なくとも以下の点だけは守るように心がけましょう。
・専門用語を避け、誰でも理解できるような平易な言葉を使用する
・作業内容だけでなく、背景や状況を明記する
・その文書の作成された経緯:問題の背景、目的
・その文書は誰に向けたものか:新人向け、熟練者向け
・その文書の内容はいつ必要になるか:午前、午後、平常時、緊急時 など
・文書の変更・管理の担当者とその更新方法を明記する
つまり、初めて文書を読んだ方が作業の目的を理解し、必要な作業を実施できることを目標として作成します。 こういった文書を作成し、新しいメンバーに教育することを実際に経験された方は分かると思いますが、必要な作業を(イラストや写真を含む)文書だけで伝えることは非常に難しいです。 普段から、自分が業務を引き継ぐ際に生じた疑問をメモしておくといいでしょう。次に自分が文書を作る側になった際に役に立ちます。
プロセスの監視(データの記録)
改善の効果が定着していることを確認するには、改善後のプロセスの一定期間にわたって監視することが必要です。 監視中に元の作業に戻ってしまうことや新しい問題が発生することがあれば、その時刻や状況を確認し、原因を突き止めなければなりません。
また、問題が明確に顕在化する場合は次の原因究明作業にスムーズに移行できますが、いつでも分かりやすく問題が表に現れるわけではありません。 このような分かりにくい変化を検出するため、管理図と呼ばれる統計ツールが利用されます。 管理図については過去のニュースレターで度々紹介していますので、詳細は過去記事をご参照ください。
今回は管理図に現れるデータの推移パターンごとの特徴に焦点を当てて説明します。
1.平均のシフト
データの平均がシフトした場合、その前後で意図しないプロセスの変更や環境の変化があることが考えられます。例えば、作業者の交代や設備の段取り替えの際のエラーなどです。

2.ばらつきの変化
データのばらつき小さくなる分には問題ありませんが、大きくなるのは問題です。例えば、長時間労働に起因する作業者の集中力の低下、設備の劣化による不具合などが考えられます。

3.突発的な値の変化
データの1、2点が突発的に異常な値を記録する理由は様々です。ロット交換の際に分かりやすく発生することもあれば、設備が正常に稼働している際に急に発生することもあります。 こういったパターンで異常値が出る場合、そのケース数も少ないことから有効な情報が得られず、原因の特定が困難になる場合が多いです。

4.周期的な傾向
データに周期的なパターンが確認される場合、その背後に時間に起因する環境要因や人の能力の変動が潜んでいることがあります。 例えば、24時間の中に周期が存在する場合、温度や作業者の集中力の継続時間などが考えられます。週、月、季節単位で分析してみることも有効です。

■まとめ
DMAICの最後のControlフェーズは、如何に成果を出すプロセスを継続させるかがキーとなります。ここまでに挙げたポイント以外にも注意すべき点は多々あります。 文書化ひとつとっても「1人で文書化に取り組むと情報が偏る」、「複数名で文書化に取り組むと前提知識・条件が揃わず、文書による情報伝達がうまくできない。」など多様です。 いずれのタスクにおいても、現場の方々を含め複数人で意見を出しつつも、意思決定においては合意を形成し、施策を遂行することが重要です。
以前も同じことを書きましたが、シックスシグマ用語やツールは、最初のうちは負担に感じられることがあるかもしれません。 しかし、実際にシックスシグマに則って業務改善を進められた経験豊富な方とお話しすると、組織の経営層から一般社員まで共通の用語・ツールで意思疎通し、仕事が進むことほど楽なことはないと口を揃えておっしゃいます。 最初は難しくとも、共通のフレームワークに沿って仕事ができることは間違いなく便利であり、結果として効果の高いプロジェクトに繋がることが期待できます。
シックスシグマが世界的な標準フレームとなっていく中で、日本でも改めてシックスシグマが見直され、皆様の業務の更なる高品質化に寄与する日が来ると願っています。
参考書籍
ピーター・S・パンデイ,ロバート・P・ノイマン,ローランド・R・カバナー 『シックスシグマ・ウェイ 実践マニュアル』高井紳二訳、日本経済新聞社
[ by Y.Itoh ]
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